高架下商業施設 開発ストーリー
高架下商業施設 開発ストーリー
築50年ほどの高架下商業施設が、明るく生まれ変わった。
昭和40年代の高架構造物ですので、耐震補強工事が必要な時期にきていたんです。まずはJR西日本が耐震工事を行い、その後、老朽化していた高架下施設に関しては当社がリニューアルすることになりました。
JR野田駅をおりて改札口の真前にあるので、駅利用者が多く立ち寄られる。また、周辺は住宅地なので、近隣のご利用者も多い施設です。
せっかくリニューアルするのだから、もっと便利に使っていただきたいし、駅周辺のイメージアップにもつながればと。
これは大阪環状線のイメージアップを図るという、JR西日本がすすめる大阪環状線改造プロジェクトの一環なんです。
駅の改良工事に伴う高架下商業施設「ビエラ森ノ宮」や「ビエラ玉造」などに続いて、JR野田駅も耐震補強工事だけでなく高架下施設をリニューアルしようとなった。
JR野田駅は大阪都心から近いものの、周辺には大きなビルもなくて、古くからの住宅地がある下町情緒ある街並みです。そんな雰囲気にうまく溶け込みつつ、駅周辺が明るい雰囲気になるようにといろいろ工夫をこらしました。
従来の商業施設にも店舗が並んでいたので、決して暗いイメージではなかったです。
ただ、北側が一面壁だったので、道路に面したお店が営業されていない時間帯はどうしてもさみしくなります。
今回、南側だけしかお店の顔出しがなかった建物を、北側にも店舗を並べてオープンにしたことで、大きく表情が変わりましたね。
外観デザインも、茶色やオレンジの系統で統一して温かい雰囲気にしました。周辺には木造住宅も多いので、木を意識したデザインを入れつつ、全体としては極力シンプルにまとめて。
それから、通路全体の照明も明るくしたので、夜でも視認性がよくなった。通勤・通学時などの防犯性という面でも、安心していただけるようになったと思います。
JR野田駅は、時間帯によって人の流れが変わるのが特徴的なんです。
通勤・通学の時間帯は、駅利用者がメインになるので、改札口のすぐ前にコンビニを配置しました。また、近くに市場があるので、できるだけ早朝からオープンしているカフェや定食屋に入っていただいて。
夜になると、駅の北側はもともとお酒を飲めるお店でにぎわっているので、ビエラ野田の北側にも居酒屋などを配置して立ち寄りやすい雰囲気にしています。
テナントリーシングは、MD(マーチャンダイジング)をベースにおこないました。MDとは駅周辺エリアのポテンシャルにあわせて、時間帯や人の流れを考慮しつつ、ベストな業種・業態、区画配置などを計画することです。
JR野田駅については、飲食店を中心としたMDを立て、想定通りのテナント様に入っていただけました。
工事車両の搬入に制限があるので、そこは苦労しました。南側に面した幹線道路はかなり幅広いのですが、その間の歩道に駐輪場がずっと続いているので車輛の入る隙間がないんです。
一方の北側道路は、幅員が5mほど。車1台がぎりぎり通れるくらいなのに交通量が多い。それでも、使えるのは北側だけなので、交通整理員に入っていただきながら進めました。
北側で営業されている店舗にもご迷惑がかからないよう、営業車の通行や停車する時間帯を聞きながらスケジュール管理するという具合に。
北側に店舗をつくるために、水道やガス管を引き込む工事などもあったから、気を使うことは多かったですね。
人通りが多い場所については、夜間に工事を行うこともありました。
万が一、接触事故などがおきると、当社だけでなくJR西日本の信頼まで損ねてしまう。現場でしっかり指示をさせていただくとともに、施工業者の方にも念入りにお願いしました。
既存の建物躯体を使いながら建てていく工事だったので、図面の段階では分からない問題がぽろぽろ出てくるんです。
たとえば、従来の古い資材と新しい資材がうまく合わないとか。そんなときは、すぐに現場で関係者をあつめて議論して、スピーディに結論を出すようにしていました。
自分だけで判断できない場合は、すぐに持ち帰って上司に相談して、とにかく早く解決する。工期を遅らせないようにと。
かなり古い電気の配線が出てきたりね(笑)。
そこに電気が通っているのかどうか。通電しているならどこまでつながっているのかと、一つ見つかるたびに、いろいろ調べることが増えるんです(笑)。そうなると、夜間に停電作業をして調べないといけない。
そのときは、最終的に通電していない配線と分かったので、きれいに整備し直して解決しました。古い物件になるほど、よく分からないものが出てきたりするんです。
本当にそうです。古い物件だけに、予測できないことが多々ありました。でも、先輩に相談しながら、一つひとつ片づけていくうちに学ばせてもらうことも多かった。
たとえば、かなり古い地図看板があったんです。外構工事に支障するため急遽撤去させてもらえないかと大阪市に協議したところ、スムーズに了承いただいた。
けれども、看板の支柱が立っている約1平米くらいの土地にも契約があるので、勝手に工事することはできないんです。土地の持ち主であるJR西日本と大阪市で交わされた契約を、部分的に解除してもらわないといけない。
最初はどこへ問い合わせたらいいのかも分からなくて、小谷さんに手続きしてもらって助かりました。こんな小さな土地にも、しっかりと契約書があるということは良い勉強になりましたね。
大変だけど、開発段階で明確にしておくことで、次の運営担当にしっかりバトンタッチできる。一つひとつ丁寧に対応することが大切なんです。
全部がつながっていますからね。決められた期限のなかで、完成形にもっていくためには、全ての工程を段取りよく進めていかないといけない。何か一つがずれても、予定が狂ってしまう。
そのために全体を見渡して調整できるのは、私たちディベロッパーにしかできない役割。そういった意味では、段取りをうまく組めるスキルというのは、とても重要なんです。
工事担当ではなかったのでそばで見ている立場でしたが、𠮷野さんは上司に判断を仰ぐタイミングがうまい。何か問題がありそうな部分は、問題になる前にちゃんと報告・処理していた。大抵の場合1~2つは「これは困った!」みたいな事態が起こるものですが、今回は非常にスムーズでしたね。
私たちソフト面の担当はテナントリーシングが主な業務ですが、ハード面で何か問題がおきてしまうと、テナント様にも迷惑をかけてしまうことになる。
早めに報告をしてもらえると、私たちも動きやすくなります。𠮷野さんの危機管理能力はすごかった。
先輩方に助けてもらったからですよ。それに、テナントリーシングの進捗状況もいろいろ聞かせてもらっていたので、ハード面の段取りもしやすかったです。
スケジュールでいうと、開業日に合わせて建物全体を造るスケジュールがあります。そこに、テナント様のご要望を組み込んでいく工程があるので、スケジュール共有は念入りにしていました。定期的に、テナント様と設計者と私たちでミーティングしたり、現場とも密に打ち合わせしたり。
関係者が多くなるほど、情報共有が大事です。今回、その連携がうまくいったことも勝因でしょうね。
今ちょうど、別の案件で若手に主担当をしてもらっているのですが、ビエラ野田の報告スタイルを参考にしてもらっていますよ。𠮷野さんのスキームを見習ってねと。
これは開業後の話なんですが、ビエラ野田で火災報知器が鳴り響いたことがあったんです。火事ではなかったのですが、誤作動してしまった。警報機の音は大きいし、駅とも設備連携しているので大騒ぎになりました。
最終的には何事もなかったのですが、場合によっては、エレベーターが止まるとか、最悪のケースでは電車が止まってしまうこともある。
私たちも慌てて駆けつけましたが、事なきを得てホッとしました。
せっかくなので、その経験をいかして誤報時の対応マニュアルを作ったんです。テナント様や駅員の方にも「今後のために」とお配りして。
その後に同じことがまた起こったのですが、マニュアルがあったので駅員の方が2分で止めてくださいました。迅速な初期対応ができたので、作っておいて良かったなと思いました。
そうですね。耐震工事などが必要な高架下物件は多くあるので、今後は同じようなプロジェクトが増えてくると思います。
高架下であること、特に駅近くでの工事では、建設機械の搬入などいろいろと気を使うことが多い。しかも、古い建物のリニューアルというのは、ある意味、新築よりも難しい部分があります。
しかし、チームがうまく連携してスムーズに進めることができました。このやり方は今後のプロジェクトにも活かしていけると思いますね。
安全に工事を行うことはもちろんですが、駅という公共性の高い場所での開発となると、JR西日本だけでなく行政との折衝もついてくる。今回はその調整が大変なことも勉強になりました。どの段階においても、次に起こりそうな問題を予測しながら動く、ということが大切なのでしょうね。
開業後は「駅前が明るくなった」とか「お客様が増えている」という声も聞こえてきて嬉しくなります。これから何十年も、JR野田駅でにぎわいを作っていってほしいなと思います。
※ 所属部署は、インタビュー当時の部署を掲載しております