複合商業施設 プロジェクトストーリー
「ビエラ蒔田」
評価された「新しい街づくり」と「地域貢献の実績」
Q.課題解決型公募を勝ち取ったポイントとは?
久谷
横浜市南区の旧南区総合庁舎跡地であるこの場所は、横浜から地下鉄で1本という立地ながら、周囲は昔からの住宅地。少子高齢化が進んでいるうえに、従来の地域交流センターが移転したこともあってコミュニティ形成の場所がないという課題がありました。
横浜市としては、単なる商業施設ではなく、住民の生活の質を向上させる開発を行いたいとお考えでした。
中岡
最初に動いていたのは当社の東京オフィスです。関東圏を中心に複数社が公募に参加されるなか、当社は「地域生活と地域交流を、ソフト・ハード両面から支える商業施設」というコンセプトで提案させていただきました。
今回は、課題解決型公募ということで、評価されるのは費用面ではなく提案内容がほぼすべて。当社が提案した新しいまちづくりの考え方と、これまでの地域貢献の実績が決め手になったと聞いています。
Q.地域生活と地域交流をソフト・ハードの両面でサポートとは?
永田
オープン時は盛り上がっても、だんだんと集客がうまくいかなくなる商業施設は意外に多いです。そうならないためには、地域に愛されて日常的に足を運んでもらえる場所にならないといけない。
当社は、JR岸辺駅前の「岸辺健都」やJR茨木駅前の再開発など、地域生活に寄り添った街づくりを得意としているので、ソフト(テナント誘致や運営管理)とハード(設備)両面のノウハウがあります。そのあたりが評価されたんだと思います。
だから、暮らす人の視点で
とことん考える
Q.開発段階で一番こだわったのは?
久谷
長期的に愛される施設となるためにはどのようなテナント構成にすべきか、企画段階でかなりこだわりました。
地域生活に今何が足りていないかを調査していくと、たとえばクリニックモールは必須だとか、スーパーマーケットも必要だけど高齢者向けに宅配できるサービスでないといけないとか。
永田
子育て支援としては、ママ友が集まりやすい場所として、キッチンつきの多目的スタジオはいい案でした。
以前あった公民館は、横浜市運営なのでかなり安価でしたが今回は料金も発生する。それだけの価値を提供しないと利用してはもらえません。
そこで考えたのが、約130平米の多目的ホール横に、キッチンスタジオを併設する案でした。
キッチンの横には8人がけテーブルがあるので、少人数グループならここだけで楽しんでいただける。逆に、大人数の発表会を多目的ホールで催したあとに、懇親会をひらくこともできます。
中岡
音響設備もいいですが、とくにピアノはかなりいいものを選びました。「あのグランドピアノを弾いてみたい」とスタジオを訪れてくださる方も多くて、こだわったかいがあったなと思っています。
Q.地域の人たちの表情が浮かんできますね。
永田
私たちも、できるだけ利用者様の視点に立てるように、何度も何度も考えましたね。そんなこともあって、当初のパースからはかなり変わっているんですよ。
久谷
そうそう、結構変わっています。外観のデザインも内装も、みんなで意見を出し合いました。
中岡
屋上のオープンテラスも、そんな発想から出てきたひとつ。隣接する大岡川は桜の名所なので「桜をゆっくりと眺めてもらえる場所をつくりたいね」となりました。
逆風をクリアできたのはワンチームのちから
Q.振り返って、いちばん苦労した点は?
久谷
コロナ禍真っ只中だったので、テナントリーシグには本当に苦労しました。飲食店がどんどん閉店した時期で、新規出店をしようというお店は非常に少なかったです。
とくに、カフェの誘致には苦労しました。もう何十件と声をかけましたが、ずっと断られつづけて。
でも、買い物や病院の後に「ちょっと、ほっこりしたいな」となったとき、一息つける場所がまわりにもあまりなかったんです。だから、絶対に見つけてやる!と粘りに粘りました(笑)。
永田
ついに、他業種のテナント様が新規事業としてカフェ出店を決断してくださったんですよね。
久谷
新たなチャレンジとして、カフェを開こうと決断してくださった。あの時はもう言葉に表せないほど嬉しかったです。
中岡
コロナ禍といえば、オンラインで図面の打ち合わせをするのも厳しかった。今でこそ慣れましたが、「この部分の」「え?どの部分?」みたいな会話で、打ち合わせ時間も倍以上かかってました。逆に、定刻で終わると半分くらいしか伝わってないこともありましたね(苦笑)。
永田
だから、みんなでいつも以上に会話していた気がします。他の物件も同時進行で忙しい時期でしたが、頻繁に集まってはルールを確認したり、相談し合ったりしましたよね。

Q.チームで動いている感覚が強かった?
永田
その感覚はものすごくありました。社外のゼネコン様や企画会社様も含め、みんなが「地域に貢献できる建物にしたい」という気持ちで走っていた感じです。
久谷
テナント様との関係においても同じです。開発スタッフだけでいくら盛り上がっても、実際のプレーヤーであるテナント様が共感してくれないと、机上の空論になってしまう。
当初からずっとコンセプトを伝え続けてきたのが大きかったと思います。
中岡
若い二人がほんとうによく頑張ってくれました。この場には参加していないけれど、ゼネコン様はじめ、たくさんのメンバーも含めて本当に助けられました。
稼働率は想定値を大きく超えた!
Q.開業後の反応はどうですか?
永田
小さなお子様からおじいちゃんおばあちゃんまで、多くの方々にご利用いただいています。
とくに、多目的スタジオは当初の想定よりかなり高い稼働率。地域に賑わいをもたらすような子どもたちのダンス発表会や自治会の会合など、こちらが計画段階から期待していた使い方をしてもらっています。
中岡
開業イベントや一周年イベントで、盛り上げることができたのも良かったですね。
永田
多目的スペースがあることで「以前の公民館ではできなかったことが、ここならできる」ことを知っていただきたかったので、いろいろな催しを考えました。コンサートや子ども向けワークショップとか。
さらに嬉しかったのは、一周年イベントの際にはテナント様が主体となって動いてくださったこと。
こんなふうに盛り上がっていけるのは、「地域に貢献できる施設を」というコンセプトに皆さんが共感してくださったからだと思います。
久谷
イベントの様子を見に行くと、「こんなにたくさんの子どもたちが住んでいたんだ」と思うほどでしたね。
都心からのアクセスがいい場所なので、住みやすさが整っていくと、より多くのファミリー層を呼び込めるのだろうと思います。
Q.環境配慮にも力を入れたそうですね?
永田
「建築物省エネルギー性能表示制度 BELS」※1において、5段階評価の最高ランク(星5つ)を獲得しました。また、ZEB Ready※2認証も、JR西日本グループの複合商業施設として初めて取得できました。
※1 BELSとは、建築物における省エネ性能を第三者機関が評価し認証する建築物省エネ性能表示制度。
※2 ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物。
ZEB Readyとは、ZEBを見据えた先進建築物として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギーを除いた基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減に適合した建築物。
久谷
認証にむけた準備が大変でしたが、これもチームで頑張った成果の一つだと思っています。蒔田の新しい顔となる建物を目指して、環境対策も重要な一つの要素として取り組みました。

Q.もし、自分たちで点数をつけるとしたら?
久谷
遠慮なく言わせてもらうと、100点です。プロジェクトに関わってくださった関係者の皆さんと、自分たちにも満点をあげたいです。
中岡
コミュニティ形成に関していうと、当社が推進している「Make PLACE」という考え方がありまして。ソフト・ハードの両面から、人と人のつながりをサポートできたというのは、まさにMake PLACEを実践できたなと思っています。
永田
そうですね。しんどいこともたくさんあったけれど、成果も大きかったですね。
私がプロジェクトに参加させてもらったのは、竣工半年前の時期。いちばんバタバタしている頃で、コロナ禍の影響もあり大変な時期でしたが、逆境を跳ね返すパワーというか勢いを感じました。
このプロジェクトに参加できて、ほんとうに良かったと思っています。
プロジェクトを振り返って
思うこと

まだ入社2年目でしたが、細かな部分は結構決めさせてもらいました。内装仕上げとか共用部のデザインとか。暴走しそうになっても先輩がちゃんと止めてくださるので、安心して意見が出せました(笑)。
この経験をいかして、今度はコンセプトメイキングから参加したいと思っています。

出張帰りで新幹線までの30分。みんなでさくっと飲んで帰るのが楽しみのひとつでした(笑)。ほんとうにいいチームで仕事をさせてもらいました。
今はマーケティング(土地仕入れと商品企画立案)担当となり新たなチャレンジをしていますが、このプロジェクトでの経験と自信が活かされていると感じています。
※ 所属部署は、インタビュー当時の部署を掲載しております。