オフィスビル プロジェクトストーリー
「日本橋ノーススクエア」
選んだのは、築31年で空き室の多いビル
Q.10フロアのうち6フロアが空き室。相当にチャレンジングですね?
内藤
条件だけを聞くと、ちょっとドキドキしますよね。でも、逆にそこがチャンスだなと。
今回はあえて空室が多くて、手を加えられる開発向きの物件を探していたのでちょうどいい物件だったのです。
粟屋
もともと6フロアを借りておられたテナント様は20年間入居されていて、移転の理由が「会社が成長したことによる拡張移転」という背景が分かっていたので、そこは安心材料でした。
数あるなかでも、これだけ空き室があって条件に合うものは珍しいし、この物件なら価値を引き出せるだろうと会社として決断しました。
Q.バリューアップできる物件にフォーカスしたのですね。
粟屋
これまで保有資産としてのビル管理はずっとやってきたのでノウハウは蓄積されている。それを活かしつつ「再生型の物件をやりたいよね」と前から話していたんです。
世の中に出ている物件というのは、ほとんどが最大瞬間風速を出しているような状態。リフォームをして価値を出し切った状態です。それを取得して運用するというのも一つですが、今回はまだ実力を出せていない物件を見つけて、自分たちで物件価値を最大限に引き出そうと。
大川
関西ではまだ少ないですが、関東ではそのようなバリューアップ物件というのが増えていきます。
今後、築年数の経ったビルが増えていくなかで、そういったノウハウは絶対に必要となってくると思います。
スピーディな決断とチームワークの良さ
Q.「このビルに決めよう」となるまでの経緯を教えてください。
大川
最初は、お付き合いのある仲介業者さんからご紹介いただき、本社のメンバーもすぐに現地に来てくれて、ほぼ1ヵ月くらいで話がまとまりました。今回はかなり早かったですよね。本社の部長も、雪が降るなかさっそく足を運んでくださって。
粟屋
取得チームのメンバー以外でも、東京出張のついでに立ち寄ってくださって、意見をもらえたことも参考になりました。
私としても、実際に見てみるとビルのグレードはいいし、構造的にも申し分ない。管理状態も良かったのでしっかり手を入れていけば、今は空き室が多くても問題ないだろうと思いました。
Q.チャレンジするにあたって、関東という距離は問題にはならなかった?
粟屋
距離感という意味では、とくにハードルは高くなかったです。もちろん私たち本社側は、見に行っても1日くらいしかいないので接触時間は限られるのですが、東京事務所で大川さんがうまく連携してくださるので不安はなかったです。
やはり物件の取得って、現地にいて肌で感じないと分からないことや、交渉にあたっての人間関係ってとても大切ですからね。
大川
テナント料の試算では、喧々諤々な場面もありましたけどね(笑)。
首都圏と関西では地域差があるので「もうちょっと上げてもいけるんじゃない?」「いやいや、どうかな〜」みたいな。でも、仲介業者さんからのリサーチ情報もいただけてうまく落ち着けることができました。
内藤
そうそう、そんなこともありましたね(笑)。それに取得チームだけでなく、バリューアップやリーシングを担当する宮本さんたちとも意見のすり合わせはしました。私たちだけで勝手に決めても、実際に動いてもらう管理チームに迷惑をかけてはいけませんから。
宮本
定例ミーティングはかなり頻繁にやっていますよね。1~2週間に1度はオンラインで集まっています。
物件もそうですけど、メンバーも東京と大阪で分かれているので、できるだけミーティングの時間をもって認識を合わせていくようにしていました。
入居者ニーズを反映できてこそ、バリューアップが生きてくる
Q.バリューアップは具体的にどのように進めていったのですか?
宮本
最初は、入居されている企業様、メインターゲット層であるスタートアップ企業の方々にもヒアリングを行いました。
日本橋という場所はもともと高級感のあるオフィスビルが多いのですが、最近はスタートアップ企業も増えている。少人数から入居しやすくて、家具つきのセットアップオフィスが求められているエリアでもあるんです。
ただ、日本橋という土地柄、あまりカジュアル過ぎても好まれない。そのあたりはリサーチをかけながら、上質感のあるデザインにという方向性が固まっていきました。
田頭
機能面においても、宮本さんがヒアリングしてくれた内容をかなり盛り込んでいます。
たとえば、スタートアップ企業の傾向として、少ない予算でどれだけの席数を確保できるかが重要視されやすい。執務スペースにゆとりがないだけに共有のラウンジは広くとって、そこでも気分を変えて仕事ができたり、コミュニティが持てるような仕様にしました。
ラウンジの必要性について、傾向としては知っていましたが、実際の声を聞いてみて「なるほどな」と。実感として認識が変わりましたね。
佐藤
その他にも、一人用の個室ブース(テレカンブース)。コロナ禍以降ウェブ会議は定着しているので、そういったニーズは多いようなので、入居者様の要望を聞きながら増やしていくかもしれません。

Q.とくにこだわった部分は、ラウンジスペース?
田頭
ラウンジに関しては2つあります。
1つは、競合物件との差異化を図るために、外ラウンジ型にしませんかという提案を設計会社さんからもらったんです。外ラウンジというのは、執務スペースとラウンジを壁で区切るというもの。執務スペースとラウンジを区切らない内ラウンジが主流なので。
ただ、そのスタイルが本当に受け入れられるかどうかは分からない。そこで、まずは一期工事の3フロアで混在させて、内覧会の反応を見てみようと。ところが内覧会をやってみるとどちらも好評でね(笑)。
結局、残りの3フロアも混在させました。期待度が高いラウンジということで、こだわったというか非常に悩みましたね。
佐藤
もう1つは、コミュニティ形成です。
スタートアップ企業では、少人数で起業されていることやクリエイティブな業種も多いことから、横のつながりを大切にしたい方が多いんです。コミュニケーションが取りやすい空間づくりは、私たちが得意としている部分なので。
宮本
たとえば、会議スペースをガラス張りにすることで視線が通るようになど、ちょっとした工夫を加えることでコミュニケーションが取りやすい空間をつくることができる。コミュニティ形成をサポートする※というのは、地域活性化や防災面をサポートするという意味でもとても大事なことなんです。
※JR西日本不動産開発が取り組む「Make PLACE(コミュニティ形成を支える仕掛け)」。ハード・ソフトの両面からサポートしています。
高い評価と知見を、次のチャレンジにつなげたい
Q.第一期工事の内覧会が終わって、反応はどうでしたか?
宮本
ちょうど今そのタイミングなんですが、かなり好評です。概ね「すごいっ!」「デザインがかっこいい」というお声をいただいています。
目指している賃料帯はかなり高めですが、それに見合った内装に仕上がったと思っています。あとは、これだけのオフィスビルに負けないように、リーシングをしっかりとまとめていかないといけない。ここからは私たち管理チームが忙しくなってくる時期です。
JR西日本不動産マネジメントがリーシングを進める一方で、収支の取りまとめや管理サイドの指示系統は本社の佐藤さんが担当してくださっています。
佐藤
はい、私は昨年入社なので、このビルが取得された6月にちょうど配属になったんです。正直分からないことだらけですが、ひとつクリアするたびに勉強させてもらっている感じです。
Q.配属早々にプロジェクトだったのですね。先輩方はちゃんと教えてくれますか?
佐藤
はい、何か質問しても、その倍くらいのことを教えてもらってます。とくに、宮本さんとは業務で関わることが多いので、いろいろ勉強させてもらっています。
宮本
いえいえ(笑)、今はJR西日本不動産マネジメントに出向している立場なので、あまり口出ししすぎるのもどうかなと思いつつ、でも申請手続きなどややこしい業務も多いのでね。私も以前、粟屋さんと同じ部署だったときに、いろいろ教えてもらったり助けていただいたので順番ですね。
田頭
いやー、すごいなと思ったのは、若手の3人が先頭に立って頑張ってくれたことです。私たちおっさん組は自由にやらせてもらっていた(笑)。
内藤
たしかに、最初のうちは質問や相談されることが多かったけれど、だんだんと聞かれることもなくなってきましたよね。すごい進歩ですよ。

Q.まだ第二期工事がスタートする段階ではありますが、ここまで振り返って思うことは?
田頭
今回はとてもいい経験をさせてもらっています。このチャレンジを上手く活かして、もう少し大きな規模の物件にもチャレンジしていきたい。
スタートアップ企業は人数が増えていくケースが多いので、そのうちにこのビルが手狭になる時期が来るんです。その時に「じゃあ、もう少し広めの物件もありますよ」と紹介できるように、私たちも負けずに成長していきたいと思いますね。
内藤
ここで得た知見を、ぜひ西日本でも活かしていきたいですね。今後ニーズは増えてくるはずなので。
宮本
私も佐藤さんと同じで、開発業務に携わるのはまったく初めてだったんです。今まで出来上がったビルの管理業務を担当してきたので。建築基準法とか設備面の用語など分からないことだらけでしたが、先輩方に教えていただきながら、開発者目線でどんなことに注意しないといけないかなど勉強になることが多かったです。
粟屋
JR西日本不動産マネジメントさんと、開発段階から一緒になって取り組んだこともいい経験になりました。たとえば、施工業者さんから提案を受ける際にも、意見は聞きつつもこちらの意見をしっかり通していただけたので開発クオリティも高くなったと思います。
このようにタッグを組むケースは今後どんどん増えていくと思うので、物件の取得担当としても気合を入れ直していきます。
プロジェクトを進めながら
思うこと

ラウンジのソファを選ぶにあたって、みんなでショールームへ出掛けたのが楽しかったです。
「あれがいい、これがいい」と言いながら座りごこちを確かめて、最終的にリクライニングができてくつろげるものを選びました。皆さんに気に入ってもらえるといいなと思っています。

何も分からない状態で参加させてもらったので、ミーティングに参加しながら、パソコンで「梁とは?」と検索したりしながら頑張っていました。プレッシャーもありますが、最初から大きな開発案件に携われて恵まれていると思います。

初めて開発業務から担当させてもらったことで、多くを学ばせていただきました。とくに、スタートアップ企業様へのヒアリングで得た要望を開発において実現できたことと、実際に高い評価をいただけたことは自信につながりました。
※ 所属部署は、インタビュー当時の部署を掲載しております。