用地管理 プロジェクトストーリー
大阪環状線京橋駅前 遊休地活用

マイナス印象の駅前遊休地が「地域のプラス」に生まれ変わった

メンバー紹介

中村 栄祐

近畿統括総合事務所 用地貸付課
2024年 新卒入社

安本 航

近畿統括総合事務所 用地貸付課
2021年 新卒入社

福岡 寛士

近畿統括総合事務所
用地貸付課長 兼 企画課長

土地の活用方法はアイデア次第だ

Q.従来の用地管理部とはかなりイメージが違うのですが?

安本

そうですよね。用地管理部といえば、図面を見ながら土地の境界を確認したり現場でメンテナンスをしたりと、「守る」仕事のイメージが強いですから。
もちろんJR西日本が所有する土地の管理を任されている立場なので、用地の安定的かつ安全な状態を守っていくことは大前提としてあります。
でも最近は、その土地をいかに有効活用するかを積極的に考える動きが出ています。

福岡

鉄道沿線の土地だから立地条件がいい場所も多いんです。たとえば、今回のように駅前や繁華街に近い場所、あるいは人通りが非常に多い地域なら、商業施設としてすぐに借り手がつく。また近くに工場があれば、駐車場として活用してもらうことで確実に収益性が見込める。

Q.そういった遊休地がたくさんあるのですか?

中村

近畿圏のほぼ全地域を受託しているので数としては膨大です。一部は駐車場などに運用していますが、手がつけられていない遊休地もまだまだ多いのです。
また、そのままにしておくと不法駐輪の温床となったり、ゴミが捨てられるなど景観や安全面の問題も出てきて、地域から「なんとかしてほしい」という声も聞かれるようになってしまうんです。

福岡

用地管理部というのは地域との関わりが深い部門ですから、地域のお困りごとはできるだけ早く改善していきたい。それならば、問題の原因をつくってしまう「休眠状態」ではなく、土地の特性を活かしながら地域貢献できる「活用方法」を探っていこうという動きが強くなってきたのです。

京橋駅前の「好立地だが制約も多い土地」をいかに活用できるか

Q.そんな背景から始まった「JR環状線の京橋駅プロジェクト」、きっかけは?

中村

この土地は、戦後まもなく建築された旧国鉄関連の建物があったところ。2017年に大阪環状線の法面補強工事と建物の老朽化から解体した後はずっと放置されていました。建物解体後、万能鋼板で保全したものの、雑草は生えるし、タバコのポイ捨てや不法投棄、不法駐輪などが目立ってしまって、近隣からも「美観が損なわれるし、街のイメージが悪くなる」という声を多くいただいていたんです。

福岡

対処療法的に草刈りは行っていましたが、それだけでは美観に貢献しない。もっと早く手を打つべきだったのですが、建物を建てるには幅350cmしかなく、背面に鉄道が通っているので高さ制限もある。
最初は、屋台やキッチンカーも考えたのですが、天候に左右されると収益性が見込めないし、飲食店の場合はトイレの設置が義務付けられている。コストや面積の問題、制約条件などが重なってうまい活用法が見つからず、断念したまま時間が経っていました。

Q.どうやって今のアイデアが出てきたのですか?

安本

実は大阪環状線のJR天満駅前でも同じ課題がありまして、地域の商店街や近隣の方々と話をするうちに「喫煙所を作ってくれないか」という声が出てきたのです。
併せて大阪市からも、2025年1月より路上喫煙地区を大阪市全域に広げると。市内に新旧併せて約300ヵ所の喫煙所をつくると市長が明言し、この取り組みに民間の力を活用するべく補助金が創設されました。

「ニーズが高まる喫煙所とともに、飲食店舗を設置してにぎわい創出にもつなげませんか」と市会議員や区役所にも相談して、JR天満駅前に第一弾を作ったのです。

福岡

完成すると、地元の方々や行政、駅からも大変好評をいただきまして、その第二弾として京橋にも展開しようとすぐに動き出した。喫煙所の設置期限も迫っていたので、2024年4月に天満の喫煙所と店舗がオープンした後、京橋でもすぐに地域の方々へ提案しました。

丁寧に話を聞き、プラスメリットを伝える

Q.新たな試みだけに、苦労も多かったのでは?

中村

そうなんです。やはり一番は、地域の関係者との合意を取り付けるまでがひと苦労でした。
事前にやり取りはしていたのですが、地域の商店街連合会や自治会の役員、都島区長等も参加された連絡協議会でも説明を行いました。当日、会場に行ってみると体育館よりも広い会館に、ずらっと100人近く関係者が座っておられて、こちらはたったの3人(笑)。さすがに怯みました!

安本

本題に入る前に「まずは不正駐車の問題解決が先だ」となって、なかなか話が前に進まなかった時はどうなるかと思いました(笑)。

ただ、事前に連合会の会長にはきっちりとご説明していたので、話はスムーズに進みました。はじめは課題山積というマイナスの雰囲気だったのに、最終的には「これからもよろしくお願いしますね」とプラスの雰囲気で話がまとまった。
福岡さんのマネジメント力はすごいなと改めて思いました。私もいつか身につけたいと思います。

福岡

なかなか公式な立場でお話する機会って限られているので、「せっかくだから、これも相談しておきたい」となるのは当然だと思います。そこは真摯にお話を聞かせてもらって、一緒になって解決策を考えていく。人と人の信頼関係が大切な仕事なので、泥臭いかもしれないけれど話し合いのステップは外すわけにはいかないんですよね。

Q.逆に「これは上手くいったな」ということは?

安本

今回、土地の所有権の問題が少し複雑だったのです。JR西日本の土地と道路との間、幅50cmの敷地だけが別の所有者の土地なのです。だから、喫煙所を利用するためには、他の所有者の土地を通らないと入れないことになる。こういった問題は用地管理ではありがちなことなのですが、今回はそこに自動販売機を置いてもらってその収益を得ていただくという提案で利用を可能とすることができました。

結果、当社は用地活用が可能となり、土地所有者様にもメリットがあるというアイデアが出せたのは良かったと思っています。

福岡

自動販売機の収益活用は、天満のときに安本くんから出たアイデア。その時は喫煙所の運営を誰にやってもらうかという話があって、自動販売機の業者さんに設置する代わりに清掃や店舗のオープン・クローズを担当してもらうことになった。
新たなチャレンジを進めていくなかで、こういう自由な発想はとても大事です。若い人たちの方が得意ですよね。

地域共生に貢献できたプロジェクト

Q.今回の取り組みで得たこととは?

中村

私は入社1年目でこのプロジェクトに参加させてもらいました。もともと用地管理部を希望した理由は、土地の管理業務だけでなく、不動産全般に関わるマネジメント能力を高めたかったから。権利調整や不動産活用にともなう複雑な課題を解決する力を身につけていきたいと思っているので、日々いろんなことが勉強になりました。

安本

一番大きいのは、地域との信頼関係を築くことの大切さを実感したことです。土地を扱うだけでなく、地域の困りごとを解決することで、当社への信頼や協力が得られるようになる。それが次のプロジェクトにもつながる土台になると学びました。

福岡

天満も京橋も駅前の好立地ですから、テナント募集をかけた途端に「待ってました」とすぐに決まったんですよ。それほど注目される場所で、自分たちのアイデアを形にして新たなビジネスモデルをつくれるのは醍醐味です。
さらに、地元の方からも「きれいになって良かった」「にぎわいができて良かった」と喜んでいただけるのは本当にうれしいですね。

Q.まさに、JR西日本グループがめざす「地域共生」ですね。

福岡

地域の方々と密接に関わる仕事だけに、生の声を聞ける最前線であることは間違いないです。近畿圏全般と広範囲であるためニーズも様々。地域の特性に合わせた解決策はいろいろ出していけるはず。
守りではなく攻めの姿勢で取り組んでいくことで、若い人たちにもチャレンジの機会を提供できると思っています。

中村

当社の取り組みである「Make PLACE(コミュニティ形成を支える仕掛け)」の観点からも、新たなスキームをつくれたと思います。第三弾のプロジェクトも動き出しているので、プラスアルファを考えるのが今の課題です。

安本

遊休地として置いておくと不法投棄などマイナス要因が増えてしまいがちですが、地域の方々と会話したり土地の特性を見ながら考えていくことで、地域にとってのプラスを作り出すことができる。また、何らかのビジネスを作り出すことでJR西日本グループにも貢献できるのは、やりがいがあると思います。
地域共生という言葉はやや眩しいですが、用地管理ビジネスはこれからもっとおもしろくなると感じています。

プロジェクトを振り返って
思うこと

中村 栄祐の写真

配属されて間もない時期に、天満の「HIRAKEL」がオープンしたんです。実際に店に行ってみると、料理もおいしいし、コンテナ型のコンパクトな店内にうまく厨房やトイレも配置されていた。地元の方からも喜ばれていて、いい仕事だなと思いました。

安本 航の写真

用地管理って測量したり土地の管理をしたりという技術的なイメージが強いと思います。でも、実は人と人とのつながりが密にあって、そこから生まれたアイデアを形にできる仕事なんだと発信できたことも良かったです。

※ 所属部署は、インタビュー当時の部署を掲載しております。